こんにちは、元広島東洋カープの中田廉です。夏の甲子園もいよいよ決勝戦。母校・広陵高校は惜しくも2回戦敗退となってしまいましたが、3年生のみんなに、本当にお疲れ様でしたと伝えたいです。広陵高校野球部で過ごした3年間はかけがえのない宝物だと思います。次のステップでの大活躍を期待しております。新チームの1・2年生は素晴らしいチームを作って、先輩方が成し遂げられていない春、夏、日本一に向けて中井監督、スタッフの方々の下で頑張ってください。

 そして、今回は広陵高校時代の同級生で、3年間ずっと同じ部屋で寮生活を過ごしてきた上本崇司について書かせていただきます。

崇司が作った新しい4番打者のスタイル

 本日8月22日に33歳の誕生日を迎えた崇司ですが、今季はプロ11年目にして自身初となる4番での出場を果たすなど、新井監督が「本当に必要な選手」「代わりがいない選手」と常々口にしているように、レギュラーとしてチームに欠かせない存在となりました。

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 初めて4番で出場した7月22日の中日戦は、僕も現地で観戦していたのですが、スタメン発表のコールを聞いてとても驚きました。これは崇司の長打力を見込んだ起用で、ここから本塁打を量産して40本くらい打ってくれるのではないか……と薄っすら期待しながら見守っていました(笑)。

 というのは置いておいて、意図があっての4番起用。どういう打撃を見せるのだろうと注目していたのですが、崇司は新井監督の考えていることをしっかり汲み取っていました。

 まずは三振をしない。チャンスで三振というのは何も起こりません。そしてケースバッティングも送りバントもできる打者。西川龍馬が故障離脱して、得点力不足が危ぶまれていた中で、得点に繋がるような打撃をするには崇司が4番に適任でした。

 数試合見ていると、違和感はなくなりました。本塁打だけじゃない。前の打者、後の打者に良い相乗効果を生める存在。表向きでは「4番目でやることは変わらない」と言っていましたが、新しい4番打者のスタイルを作ったと思います。

上本崇司 ©時事通信社

30代になってからレギュラーを掴み取った選手

 しかし、8月17日の首位・阪神との試合中に左のハムストリングを痛め、翌日から離脱となってしまいました。

 平然とプレーしていたように見えて、相当疲れていたと思いますし、ハムストリング以外のところも悲鳴を上げていたと思います。そして、様々なポジション、打順を任されていて、身体だけではなく、精神的にも疲れが出ていたと思います。

 これまでシーズン通してずっとレギュラーで試合に出ていた選手ではありません。30代になってから、控え選手からのし上がり、レギュラーを掴み取った選手。これはプロ野球選手としても珍しいのではないでしょうか。僕は投手一本だったため、野手のことを100%理解しているわけではないですが、若いときからレギュラーで出るのと、30歳を過ぎてレギュラーで出るのとでは、身体への負担は全く違うはずです。

 彼のことを昔から知っているからこそ言えるのは、どこか痛くても、どれだけ疲れていても、絶対に「痛い」とか「疲れている」とか弱音を吐かない選手なんです。なので、睡眠をしっかり取れているのかなとか、しっかりケアできているのかなと心配していました。

 ハムストリングを痛める2日前の試合でも手に死球が当たっていました。あれも相当痛かったと思います。それでも駆け寄ったトレーナーを制して、「大丈夫です」「プレーできます」といったようなことを言っていました。自分がスタメンで試合を任されている。優勝目指して戦っている大事な夏場の、しかも首位との試合。今の立ち位置を確保しなきゃいけないのもあるし、こんなことですぐに負傷して三軍に行くようではプロ野球選手としてはやっていけないというのを後輩たちに見せようというのも感じました。

 表ではあまり感情を出さないですが、裏では熱いものを持っているタイプなんです。足を痛めたプレーも、本人はまだやれると言っていたようですが、新井監督が言っていたように、まだシーズンは続くので、無理矢理やるよりも、しっかりと万全の状態に治して、残りのシーズンを全力で戦ってもらいたいです。