距離感じゃない、在るかどうかだ
僕は絶対的に「続ける」ことだと思います。
球場に通わなくてもいい、毎試合結果だけをチェックしてもいいし、たまにスポーツニュースを眺めるだけでもいい。
ただ自分なりのペースで、心の片隅に常にジャイアンツを置いておく。これこそがいつかハッピーを届けてくれるのだと思います。
2005年以来、18年ぶりの優勝を遂げた阪神タイガース。
最高な歓喜の瞬間を過ごした阪神ファンの全ての方が、18年間常に高い熱量で応援し続けていたわけではないと思うのです。
いつも賑やかな甲子園のスタンドですが、やはり今年は格別な盛り上がりだったのもチーム成績が影響してのことでしょう。
でも、興味を失ってしまっていたり、他球団に推し変していたりしたわけではない。そうだとしたら、今年の優勝をそこまで喜べなかった…。多かれ少なかれタイガースを想い続ける心があったからこそ、今年の優勝を大いに喜べる。
僕自身、純烈で初めて紅白歌合戦に出た2018年は特に多くの祝福の言葉や連絡をもらいました。
本当にありがたい気持ちで幸せを感じつつ、冷静な自分がボソっと言います。
「あれっ? 俺、こんなたくさん知り合いいたっけ?」
嬉しいことが起きた時には人が集まるんです。
それまで全くこっちを向いていなかった人も来てくれるんです。ほんの一瞬モヤっとしたものが心をよぎりますが、すぐに消え去ります。
それでいい…、いやそれこそがいいんだと心の底から思います。
「純烈が紅白」と聞いて、自分に連絡してくれるのは心の片隅に自分を置き続けてくれたから。
僕ですらそうなんです。
長い歴史を持つジャイアンツなら、もっと広く受け入れてくれます。
その日の成績によって手首がちぎれそうなほど、称賛と批判を受け続けてきた歴史があります。
今年はすっかり見る気をなくしていた方が、来年以降にチーム成績がよくなってきた時には当たり前のようにまた帰ってくる。
少しでも見続けていたらいつでも帰れるし、いつでも当事者の感情を味わえます。
谷あってこそ山輝く
日本スポーツ史の中でも有数の名場面の1つである伝説の「10.8決戦」のような瞬間に立ち会うのなら、絶対にその球団のファンでいた方が幸せです。
94年、野球に興味を持ち始め何となく眺めていた小学2年生の僕よりも、私語を許さないという緊迫感で、ミスター率いるジャイアンツを応援していた自分の父親の方が幸福度は高かったと思うのです。
今の自分があの場面に立ち会えるとなったら、仕事の休みを申請するレベルです。
それに対して当時、あれだけの熱を誇っていた我が父は先日実家に帰った時に「今年の阿部慎之助はよく打つのか?」と呑気に聞いてきました。
いやいや、引退してるし、何ならもうすぐ監督になるよ。そう呆れつつ、興味は失ってないから、親子揃って心にジャイアンツがいるんだなとホッコリしたものです。
来年、強いジャイアンツが戻ってきた時には今度は子である自分の方が強い熱を持って、また父と並んで応援できたらいいなと思ったりします。
昨年に続き2年連続のBクラスとなった今年のジャイアンツ。
前回の2年連続Bクラスは約20年前の2005~2006年になります。この2年間の当時、ちゃんと試合を見た記憶はほとんどありません。
そのくせ、翌2007年にリーグ優勝を果たした時にはちゃっかり狂喜し、CSで中日に敗れた瞬間には「(走塁ミスをした)古城なんでだよー!」と叫んだ記憶があります。そんな僕が今や、ちゃっかりジャイアンツに関するコラムを書く仕事をしているのです。
そのおかげもあって、前回は気持ちが離れかけた2年連続Bクラスも今年は近い距離からその敗戦をたくさん眺めました。
負けても弱くても全然ハッピー! ジャイアンツはいつだって最高! と言える心の広さはない僕です。強い方が嬉しいし、できれば勝利を見届けたい。
けれどこの2年間を近い距離で見続けたからこそ、次にチームが優勝をつかんだ時には2007年の時以上の喜びを味わえると確信しています。
それが来年になるのか、もう少し遠い未来になるのかはわかりません。
いつか来るその瞬間に感情を爆発させるためにも、なるべく近くでジャイアンツを見ようと思うのです。
その時に、この1年間、僕のコラムを読んでくれた貴方と、喜びを共有できたならそれに勝る幸せはないだろうと。
そんなふうに思います。
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