インフレに暮らしが圧迫される今、私たちはどのように大切な資産を守ればよいのだろうか? 『株高不況』(青春新書)より一部抜粋し、今こそ買うべきインフレに負けない“優良資産”をご紹介する。(全3回の2回目/前回を読む、続きを読む)

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インフレの影響は低所得者に集中

 こうした賃金と物価の相互刺激作用が激しくなると、「賃金インフレスパイラル」と呼ばれる現象に陥る恐れがあります。インフレで生活費が上がると労働者はさらに高い賃上げを要求し、それに伴うコスト増で企業は商品の価格を一段と引き上げるため、インフレ率がさらに加速してしまいます。

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 高インフレで割を食うのは低所得者層です。その背景の一つとして支出構造があります。

 一般に所得が低い世帯ほど、収入に占める生活必需品の割合が高くなります。食料や住居費、光熱費など節約に限界のある品目への支出ウエイトが高い傾向にあるということです。

 収入のほとんどが、いわゆる生活費に充てられるという世帯も多いでしょう。そのため、エネルギー価格や食品価格の上昇に低所得者は脆弱です。

 また低所得者は預貯金など金融資産が少ない傾向にあります。そうした家計にとって、インフレが重くのしかかることは言うまでもないでしょう。貯蓄を取り崩してインフレをしのげればいいのですが、その余地は限られています。

 また「逃げ場」が少ないという問題もあります。たとえば、中・高所得者は旅行やおしゃれな衣服にかけるおカネを減らすなどして贅沢を止めることができますが、低所得者はそういった支出が元から少ない傾向にあるため、防衛手段に乏しい面があります。

 さらに代替選択肢が少ないという点もあります。たとえば、全てのパスタが20 %値上がりしたとします。所得がある程度高い世帯は、それまで買っていた300円のパスタが360円になるのに抵抗を覚えるのであれば、グレードを1つ落とし、値上げ後の価格が300円程度の商品に切り替えることができます。一方、元から最も廉価な商品を購入していた低所得層の世帯は、値上げを受け入れるしか選択肢がありません。