生活必需品は「買わない」という選択肢がありませんから、インフレが直撃します。また賃金が大きく伸びていたとしても、ベースの賃金が低い人は物価上昇に追いつけるとは限りません。

一方、インフレでトクをするのは……

 他方、インフレがむしろ追い風になるのは、豊富な金融資産や不動産を持つ富裕層です。

©beauty_box/イメージマート

 1章で論じたように株式はインフレに強い資産ですから、インフレ環境では上昇する傾向にあります。

ADVERTISEMENT

 富裕層は、生活必需品の負担増加を吸収してなお余りある資産価格の上昇にありつける可能性があります。これらを踏まえると、賃金と物価がどんどん上がると、消費者の生活は格差の拡大を伴ってさらに苦しくなってしまいます。

 これが日本銀行を含む多くの中央銀行が物価目標を2%程度に設定している理由の一つです。2章でも述べた通り、賃金、物価、金融政策(金利)、株価、為替は全てつながっています。

 つまり、株価や為替の予測精度を上げるためには賃金、物価、金融政策に対する理解を深める必要があります。

次の記事に続く 日経平均が5万円を突破しても苦しい生活…好景気の実感を伴わない“株高不況”はなぜ発生したのか?