ゴルフ界のレジェンドとして知られる“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さんが、12月23日にS状結腸がんにより78歳で死去した。
70歳を超えた尾崎さんは歩くことさえままならず、イップスの悪化にも悩まされていたが、思うように体が動かない中でもゴルフをプレーし続けることにこだわった。尾崎さんが、その胸中を語った中村計氏の記事「独占告白 ジャンボ尾崎『武士として死にたい』」を一部紹介します。
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場所を選ばずタバコ
「人には頭の脳と、指先の脳と、2つ脳があるんだよ。だから普段、絵を描いたり、字を書いたり、彫刻を彫ったり、指先を使う人は、イップスにはならない。でも長い間やって、年をとってくると、指先の神経が鈍るんだ」
今の尾崎は、体力も、技術も衰え、メンタリティーだけが剥き出しになっているようにも思える。あまりに棄権が多い尾崎に対し、「永久シードの乱用だ」と非難する声も聞こえてくる。もし尾崎が出場を辞退すれば、そのぶん枠が1つ空き、チャンスが巡ってくる若手がいるからだ。しかし、尾崎はそんなことには構わない。
「これしかないからね。簡単な言葉で言えば、ゴルフが好きで好きでしょうがないからな。好きなものを取られたら、奈落の底に落ちてしまう。だから、なんとかしがみつこうとしてるんだろうね」
また、ホールを終えるごとに場所を選ばずタバコを吸う姿も決して見栄えのいいものではない。本来、選手がプレーするロープ内は禁煙になっているのだが、誰も忠告できないのだという。開幕戦の前日に行われたプロアマ戦で、尾崎は「今年はグッドマナー賞をねらっている」と観客を笑わせた。おそらく、尾崎はわかっている。だが、あえて全盛期と同じように無作法を決め込んでいる。己のエゴを優先させている。そうすることで、全盛期の「半分になった」という気力を何とか奮い立たせようとしているようにも思える。
しかし、これだけ思ったようにプレーできない中で、10年も続けられるのは、やはり並大抵のことではない。普通の神経なら、とっくに精神が崩壊しているはずだ。
「腹切って死のうかなって」
自然の摂理に必死に抗う尾崎の姿は、誰にも、何も言わせない凄みがあるのも事実である。
だが、どんなに抗っても、やがては落ち切るときは来る。そのとき、尾崎は何をするのか。
「ゴルフを捨てる。指導するとか、解説するとか、そんなことはできない。俺は、我がままな人生を満喫してきた人間だからね。他のことなんてできない。ゴルフがプレーできなくなったら、俺の人生は99パーセント終わり。ただのおっさんだよ。誰も住んでないけど、徳島の生家はまだあるんだ。田舎に帰ろうかな。長い1日を、どうやって過ごしたらいいのかね。ははは。別に長生きしようとは思ってないんだけど。変な話、ゴルフが出来なくなったら、腹切って死のうかなって。趣味が刀剣なんだよ」
自宅には18振りの名刀があるという。いい業物が手に入れば、1本は誰かに譲る。そうして18本を維持している。ゴルフの18ホールにかけているのだ。





