――今、練習をしていても、それは苦ではないんですか。
「苦ではないよ。変わりもんって言えば、変わりもんだよな。自分がしたいことをしたい! そういう人生をずっと歩んできたから。それをいまさら変えるわけにはいかない」
――こういうプレーをしたら、引退を決断するときだろうなというイメージはあるのですか。
「今、飛距離を伸ばすための、新たな方法を見つけた。それが今年、どういう結果になるかだね。それによっちゃ、ラストステージになるわけよ。50パーセント、ギリギリの男だから。1パーセントでも落ち込んだら、もうダメだな。49じゃ」
いい短刀を買わないと
――まだ、完全燃焼はしていないということなんですよね。
「俺は、完全燃焼って言葉はあまり好きじゃないんだよな。俺はゴルフは一生、修験道みたいなもんだと思ってるから。一生、悟れるわけはない。でも、なんとか、それに近いものはあるんじゃないか……とね」
尾崎は本気とも、冗談ともつかない様子で語る。
「修行ができなくなったら、人間、だいたい終わりだ。天台宗の千日回峰って修行は、7年間かけてやる。その時に短刀を差しているのは、完遂できなかったときに、自分で死ぬため。俺も、そろそろ、いい短刀を買わないといけないな。日本刀っていうと、長い、大きな刀をイメージするけど、昔の侍は、いい短刀を求めていた。それは、自分が切腹するときに、こういういい刀で切腹できた、武士として死ねたっていうのを誇りにしたいからなんだよ」
引退を考える際、「ボロボロになるまで……」という表現をよく使うが、尾崎はそれをとっくに超えている。ゴルファーとして、もはや生きることを欲しているのではない。いかに死ぬかを、探し求めている。
「俺はね、最近やってて、自分はやっぱりゴルフが本当に好きなんだなって思う。試合の日以外は、朝、どんなに風が吹いてても、雨が降ってても、間違いなく、朝8時半にはここに来る。ここへ来て、自分の練習をやったり、若い人間が練習しているのを横から見ている。それから芝生を眺めるのも好きだし。自分のいちばん好きな場所だね」
※本記事の全文(約7300字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(中村計「独占告白 ジャンボ尾崎『武士として死にたい』」)。
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