安倍晋三元首相銃撃事件で、奈良地裁は1月、殺人罪等に問われた山上徹也被告(45)に無期懲役の判決を下した。この判決の前後、旧統一教会をはじめとするカルト問題を追及してきた鈴木エイト氏は山上被告と面会している。4回にわたった面会では何が語られたのか。
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埋められなかった「認識の差」
11月19日、全国霊感商法対策弁護士連絡会の弁護士が証人として出廷し、「多くの宗教2世が安倍氏の韓鶴子総裁を称えるビデオメッセージに衝撃を受け、絶望した」と証言した。だが、それに対し裁判員が補充尋問で「その感覚が分からない」「政治家の来賓挨拶と何が違うのか」と問いかける場面があった。
事件後に統一教会問題や教団と政治家との関係を知った人と、山上被告や私のように長年この問題を間近に見続けてきた人とでは、受け止め方がまるで違うのだろう。残念ながらこの裁判では、最後までこの認識の差を埋めることはできなかった。
唯一この差を埋められるとしたら、それは山上被告自身の言葉しかなかったのではないかと思う。
12月18日、検察側が無期懲役を求刑し、弁護側が懲役20年までにとどめるべきだと訴えた後、裁判長が山上被告に「最後に述べておきたいことはありませんか」と問うた。しかし山上被告は「ありません」とだけ答え、審理は終了した。私には〈この場で何を言っても理解されることはないだろう〉と、彼が自分の思いを言語化することを諦めたように思えた。




