『男はつらいよ』映画公開55周年記念 歴代マドンナが明かす寅さん秘録

 

第4作『新 男はつらいよ』(1970年)

第36作『男はつらいよ 柴又より愛をこめて』(1985年)


 渥美清さんが“寅さん”を演じる以前に、私はテレビドラマ『泣いてたまるか』(1966〜68年)で共演させて頂いていました。一話完結で毎回、渥美さんが演じる役が変わる形式で、その第12話「子はかすがい」でご一緒したのです。脚本が山田洋次監督だったと思います。その頃の私は俳優座養成所を卒業し、大河ドラマ『三姉妹』(67年)に出演するまでの数カ月、単発ドラマにゲストヒロインとして出演し、経験を積ませてもらっていた時期です。若い私の目には、渥美さんは“人情の人”として映ったのを忘れられません。

 ですから、その後、『新男はつらいよ』の出演依頼の際は躊躇(ためら)うことなくお引き受けしました。ただ、私がマドンナを演じることを、当時のマスコミの方々には意外に思われた方も多かったようです。時代劇『風林火山』(69年)の由布姫、『3人家族』(68〜69年)の敬子、『霧の旗』(69年)の桐子などドラマで主演していた私のイメージと、まだ国民的映画になる以前の、エネルギッシュな寅次郎が躍動していた第4作とに、ギャップを感じられたのでしょうね。けれど、私の中では“役者・渥美清”との仕事は、漠然とでしたが、とても大切なことだと感じていましたから、何の不思議もなくて。そうして参加した現場はとにかく笑いに溢れていて素敵な日々を過ごせました。

 

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source : 週刊文春 2025年1月2日・9日号