全50作、40人以上のマドンナから、時代と女性像の変遷を、演劇研究者の笹山敬輔さんが読みとる。

 いま『男はつらいよ』が続いていたら、マドンナ役は誰だろうか。石原さとみ、綾瀬はるか、広瀬すず……映画やドラマで活躍する映像出身の女優ではないか。

『男はつらいよ』の歴代マドンナは、舞台出身者が多い。記念すべき第1作(以下、①と表記)は新派の光本幸子で、映画初出演だった。舞台のなかでも新劇はとくに多く、文学座から⑰太地喜和子や㉚田中裕子、俳優座から②佐藤オリエや④㊱栗原小巻、民藝から⑯樫山文枝や⑲真野響子、と「三大劇団」から万遍なく選ばれている。戦後にブームとなった新劇が、映画やテレビへの人材供給源として機能していたのである。

 

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source : 週刊文春 2025年1月2日・9日号