寅さんがマドンナと出会えたのは、稼業がテキヤだったがゆえ。テキヤ経験のある研究者、廣末登氏がその稼業の虚実を語る。

 寅さんは、テキヤで一本の稼業人(親分を持たない旅人(たびにん))である。全国を旅し、「遅ればせの仁義、失礼さんでござんす。私、生まれも育ちも関東、葛飾柴又です。渡世上故あって、親、一家持ちません。姓は車、名は寅次郎、人呼んでフーテンの寅と発します」などと、土地の同業者にアイツキ(つきあいの転倒語)し、祭りの一角にコロビ(地面にゴザなどを敷き、商品を並べて売る)の商売を許されている。アイツキと返答ができてはじめて一人前とみなされる。粗相があれば、ゴロ(喧嘩)になりかねない、緊張の場面でもあった。

 

 しばしば混同されるが、テキヤとヤクザは稼業が違う。暴力団は博徒で縄張り争いをするが、テキヤは商売人。(ニワ)()を巡り抗争などすれば商売ができなくなる。

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source : 週刊文春 2025年1月2日・9日号