あの頃、日本中が夢中になったドラマにはこの人の姿があった。「時間ですよ」「金曜日の妻たちへ」「毎度おさわがせします」「カミさんの悪口」……。デビューまもない一時期を除けば、彼女が演じ続けたのは大人の女性。日本のドラマにもこんなふうに年齢を重ねた女性を魅力的に描いた時代があったのかと思う。それなのになぜ? 50歳を前になぜ彼女は女優をやめたのか。

「雅子さんのお別れの会で私、どこかの記者にインタビューされて、『伊集院さんには、伊集院さんなりに幸せになってほしい』って言ってるんです。それでね、なぜか、会場で彼と私がにこやかに話している写真があるんです。今も家にあります」
前号での阿川佐和子さんとの対談の中で、篠ひろ子さんは、作家・伊集院静(本名・西山忠来)との出会いをこう語った。
伊集院さんの二番目の妻、夏目雅子さんが急性骨髄性白血病で27歳の若さで亡くなったのが1985年9月。今回、篠さんが保管する写真を調べると、6年後の七回忌で雑誌カメラマンによって撮影されたものだということがわかった。


「雅子さんのお母様と親しかったから、雅子さんは9歳上の私のことを『お姉ちゃま』と慕ってくれていたんです。二人がお付き合いしているのも見ていましたし、結婚生活が一年に満たない短さで終わってしまったのを気の毒にも思っていました」
当時の記事によれば、この七回忌で、伊集院さんはこうスピーチしたという。
「活字の仕事をはじめ、〈夏〉という字と〈目〉という字が出てくるとふと止まることがありまして、こういうことをずっと自分の神経のなかで続けちゃいけないなと思いまして……この6年間で教えられたことは、とにかく残りを丁寧に生きてみようと……今日で忘れるということと、丁寧に生きるということを続けたいと思います」
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source : 週刊文春WOMAN 2025春号