純喫茶ブームらしい。私も純喫茶は大好きです。そこで『片っ端から喫茶店』。
ナジャ・グランディーバがドラァグクイーン仲間を連れて純喫茶をめぐるっていうのがいいじゃないですか。なんか最近、純喫茶をやけに美しく持ち上げる風潮があって気に食わなかったんだ。もっと下世話なもんだろう純喫茶なんて。喫煙オッケーでスポーツ新聞や漫画ゴラクとか置いてあって客は場外馬券売り場の客と同じような灰色のおっちゃんおばちゃん、だけどマスターは蝶ネクタイしてる、っていうそういうのが純喫茶だ! 本来は下世話なものなんだ! ナジャたちが探索するのはぴったりだ!
と思ってたんですが、どうも私が期待したような番組とはちがった。そもそもナジャたちが毎回出るとは限らないんだ。タレントや局アナの回もある。内容も、それほど純喫茶ではない。あ、番組名をよく見れば「純喫茶」じゃなくて「喫茶店」か。それならいいか。

でも、たぶんネタが尽きてきてるんだと思う。番組開始当初は、私が期待するような「下世話で味のある純喫茶」を紹介しまくってたのだが(この番組を書籍化したものが出ていて、それを見るとイイ感じの純喫茶をナジャ様が訪れまくっている)。そんな「イイ純喫茶」が、いくら喫茶店が多いという大阪にだって無尽蔵にあるとは思えない。
なので、最近は「書道喫茶」とか「占い喫茶」とかのイロモノや、単に変わったメニュー紹介とか、喫茶店でもなんでもない店訪問とかも入り混じってる。
そんなわけで、私の望む「純喫茶探訪記」ではなくなっているのだが、私はこの番組に別の楽しみを見出している。
町を歩きながら「良さげな喫茶店」を探すんだけど見つからず、どんどんさびしい住宅街とかに入り込んでいく。まったく絵にもならない住宅街を進むナジャ・グランディーバ。通りすがりの店で「このへんに喫茶店ないですか」ってきいて教えてもらった店に「ちょっとそこは……」とスルーするナジャ・グランディーバ。テレビ的にはまずいんじゃないかという場面がけっこうチラホラと映り込んでしまっている。それをバラエティの文脈でわざとやっているのか、ただの不手際なのかがわからないが、どっちにしても心に残る。いや、私も徳島のタウン誌で店を探して紹介する仕事をしてるんですが、ほんと、探し回ってもコレという店などなく(地方だからしょうがないか)、カラ雑巾を絞るような思いであらゆる角度から面白がり方を探したりするので、なんかこの番組にチラホラ見える苦衷というかほころびにグッと来てしまうのだった。
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source : 週刊文春 2025年10月9日号






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