長谷川博己がただただ絶句していた。
それは千鳥・ノブがMCを務める『千鳥ノブと渋谷お笑い演芸館』でのこと。芸人たちが、いま一番やりたいネタを自由に披露する番組なのだが、そのメンバーが「面白い順に声をかけたら5人全員来れたんですよ。胸焼けするほど濃いぃです」とノブが言うように、天竺鼠・川原克己、ロングコートダディ・堂前透、真空ジェシカ・川北茂澄、笑い飯・哲夫、ランジャタイ・国崎和也という一癖も二癖もあるメンツ。この5人がユニットのような形でネタをするのかと思いきや、純粋にそれぞれがピンでネタをつくる形だったのに驚く。しかも、トップバッターは川原だ。

「川原が最初? どんな番組やねん」とノブがツッコむ中、始まったコントの舞台は喫茶店。川原が客として入ってくると隣には力士の客。「すみませーん」と店員を呼ぶが、何度呼んでも来てくれない。「もうええわ」と怒って店を出ると、川原は自分を撮っているカメラに向かって「何撮ってんねん!」とツッコミ。そこへ店員が「ご注文は?」とやってくる。呆れた川原が去っていくと、残された店員がカメラを見つめたまま十数秒。オチ台詞もないまま終わっていく――。
あまりに意味不明なコントに「これ流すんだ、スゴい根性してるね」とノブ。お笑いをほとんど見たことがないという長谷川は「感想も言えないくらい……」と苦笑いするのが精一杯。というか、お笑いを見慣れていてもわけがわからない。ノブは長谷川に「力士と川原の面白掛け合いのコントかなあと思わせといての、『すみませーん』で一生出てこない。出てこないだけかなと思って、店出ていったら……こっから俺もわかんないですけど……(笑)」などと説明。それが視聴者への解説にもなっているから、ただシュールなネタを流すよりも格段に見やすくなっている。
ノブは、収録後の会見で「ボケの人が目指すような番組にしたい」と語っているが、まさにこの番組に出たいと思ったボケの芸人は少なくないだろう。こんなにも自由で純粋に自分のお笑いを表現できるテレビ番組はなかなかないからだ。それを可能にしているのが、ノブのツッコミという名の手引きに他ならない。ノブは番組全体に対して「地下劇場じゃないねん!」とツッコんでいたが、地下劇場と違うのは、ノブがいるということだ。
最後のコントは、国崎によるもの。ミニタワーに扮した国崎が、その1日を歌いながら「光るキリン」におびえている。「これは、すげー好き」と笑う長谷川だったが、「光るキリンってどういう意味?」と真っ当な疑問。それは誰にもわからない。そもそもなぜミニタワーなのかもわからない。
『千鳥ノブと渋谷お笑い演芸館』
NHK総合 特別番組
https://www.web.nhk/tv/pl/series-tep-JW1G4VGXNR
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source : 週刊文春 2025年10月16日号






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