私に自然の中で過ごす楽しさを教えてくれたのは父でした。よく家族で行ったのは、家から日帰りで行ける登戸山。開発が進んだ今はもうなくなってしまいましたが、昔は小田急線の登戸駅から少し歩いていくと、小さな山がありました。父が先導して進む山道をひたすら黙々とついていったり、集めた木の枝で父が火をおこしてはんごう飯を炊いてくれたり。山の上で食べるごはんは、家で食べるよりもずっとおいしかったですね。

　医師として、登山家として、長年活躍してきた今井通子さんは第二次世界大戦が始まって間もない1942年2月、東京、世田谷区で生まれた。