(わじましんじ ミュージシャン。1965年、青森県生まれ。87年にロックバンド・人間椅子を結成、89年『三宅裕司のいかすバンド天国』出演、90年『人間失格』でメジャーデビュー。低迷期を経ながらも活動を続け、2017年には初の著作となる自伝『屈折くん』を刊行、20年には初の海外ワンマンツアーを成功させた。)

 

 朝から夜遅くまで工場で肉体労働。がむしゃらに働き、部屋も片付ける余裕がなくてゴミ屋敷に。仕事のうさを晴らすようにめったやたらと酒は飲む。哲学の本を読んでは泣き、酔い潰れる毎日。そんな夜更けに、新高円寺を歩いて青梅街道に架かる歩道橋の下に着いた瞬間に「美しく生きたい」という言葉が降りてきた。42歳にして、天啓に打たれたんです。生まれ変わった感覚がありました。

 おどろしくも重厚感に満ちたサウンドを響かせるロックバンド「人間椅子」。そのギターとボーカルを務める和嶋慎治さん。1965年12月25日、青森県弘前市に生まれた。

 実家は弘前市の御幸町にありました。そこに中学校教師の父、高校教師の母、5つ上の姉、元小学校の校長だった祖父、祖母の6人で住んでいました。

 御幸町は津軽藩の藩士が暮らした場所。向かいに学生だった太宰治が下宿したという藤田家もあり、趣きのある町で、和嶋家も津軽藩の侍でした。

 実家は“サザエさんの家”みたいな典型的な昭和の日本家屋で、1階に水回り、和室の居間、洋室の客間、縁側付きの仏間、その隣に和室。2階には、姉の部屋、洋室、その2室と階段の間に四畳半のスペースがあって、そこをカーテンで囲って僕の部屋に。子供心に古い家だと思っていたけど、60年代頭に改築された家でした。和嶋家の本家だったので、なにかと仏間の和室の襖を開いて、親戚が集まったりしていました。

「一生、ここか……」読書と音楽には夢中になれた

 72年、弘前市立第二大成小学校に入学。本家の長男であることが重くのしかかり、のびのびとできない子供時代を送る。

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source : 週刊文春 2023年12月7日号