(みきたにひろし 1965年神戸市生まれ。88年に一橋大学卒業後、日本興業銀行(現・みずほ銀行)に入行。退職後、97年にエム・ディー・エム(現・楽天グループ)を設立し、楽天市場を開設。現在はEコマースと金融を柱に、通信や医療など幅広く事業を展開している。)
僕が楽天を創業した24年前と今とを比べても、日本社会はまだまだ「ベンチャー」に対して「怪しげなもの」というイメージがあるのではないだろうか。その裏返しとして多くの人が抱いているのが、「大企業はしっかりしていて何となく安心」という感覚だろう。
でも、現実を見渡してみれば分かる通り、いま、「未来」を率先して創造している企業――グーグルやマイクロソフト、フェイスブック、テスラなど――は、全てベンチャーがメガベンチャーに成長した企業であるという事実を忘れてはならない。
なぜ世界をリードする企業は決まってベンチャーなのか。それは彼らが何よりも「スピード」を重要視して事業を展開していくからだ。
企業というものは大きくなればなるほど、様々なビューロクラシー(官僚制)が組織の中に生じ、仕事の承認プロセスが複雑化していくもの。また、大企業では何かの新しいビジネスの試みが成功したとしても、それは巨大な事業全体の一部であって、担当者の給料が一気に上がることもない。
一方で市場への挑戦者であるベンチャーは、リスクを積極的に取っていかなければ成功をそもそも手にできない。アメリカという国でメガベンチャーが次々と誕生するのは、そのために必要な「スピード」を高く評価する社会であるからだ。
例えば、楽天グループ関連会社であるバイオベンチャーの楽天メディカルでは、がんの光免疫療法の研究をしている。その新しい治療法は、アメリカのNIH(米国立衛生研究所)からライセンスを受けたものだ。当時まだ小さなベンチャーだった会社がそのライセンスを取れた理由は、武田薬品や塩野義製薬といった大手製薬会社が有利な日本と比べ、アメリカのNIHにはベンチャーに対して優先的にライセンスアウトをしていく制度があるからだ。
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source : 週刊文春 2021年7月1日号