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 ()(ぼう)(ちゆう)(しよう)はネットの海に、漂流ごみのように浮かび(ただよ)い続け、毎日毎時間毎分毎秒、ごみは大量に投げ捨てられ、増え続けている。

 中傷に心を痛め、命を絶つ人間が何人、何十人と増えようとも、お構いなしにごみは投下され、管理をちゃんとする人も現れない。

 なぜこんなことになったのかと、高校3年生までは、インターネットの普及していない世界に生きてきた世代の私は思う。誰かを中傷して()さを晴らす道具として機能し続ける匿名(とくめい)掲示板の存在を、いつまで経っても必要としている現代人は、深い闇を心に抱えてでもいるのか。それは何年経っても()やされず、より狂気に駆り立てられていくものなのか。

 非常に気楽に書き込めることが、理性の利かないスピード感で中傷してしまう原因になっていることは明らかなのに、なぜその点をいつまでも改めないかというと、悪口スレッドがたくさんの書き込みで盛り上がるために、あえて改善しないのだろう。

 私は2ちゃんねるの最盛期に芥川賞を受賞したので、たくさんの誹謗中傷を、当時浴びた。そのとき感じていたのは、とにかく耐えろという感覚で、嵐が過ぎ去るのを、身を縮めて、ずっと待っていた。

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source : 週刊文春 2025年12月4日号