降る雪や明治は遠くなりにけり。中村草田男はそう詠んだ。雪は、日本人に時代の変転を告知するものらしい。桜田門外の変から二・二六事件まで、変事は大雪とともに起きた。この2月8日の衆院選も然り▶結果は、18日召集の特別国会が物語る。「衆院憲法審会長に古屋圭司氏『高市カラー』全開 予算委員長も奪還 法務委員長は維新へ」と産経ニュースは記した。高市早苗首相の賭けは無党派層を喚起したが、中道改革連合は組織票に縋って失速した。まさに、昭和も平成も遠くなりにけり▶ただ、野村克也監督の口癖がある。負けに不思議の負けなし。この人のことだろうか。「中道設立の立役者・安住氏は会見バックレ」(9日の集英社オンライン記事)。首相がNHKの討論番組をドタキャンしたとの批判が起きた直後、中道の安住淳共同幹事長は敗戦の弁から逃げた。自分には甘い体質こそ、民主党以来続く負けの理由と知るべし▶いや、待て。上には上がある。驚いたことに、選挙制度を責めるのは、朝日が誇る「天声人語」だ。選挙直後の10日、「自民の比例の得票率は36%で」「裏返せば6割以上が別の党を選んだ」と強弁しつつ、小選挙区は「死票が多い」と責めた。結語は「過去に、未来に、重い責任を背負う政治に期待したい」と格調高いが、後からルールのせいにするのは潔くはない▶むろん、過去は重い。今回の316議席に次ぐ衆院選の圧勝は、2009年の政権交代期に民主党が獲得した308議席。選挙翌日の8月31日の天声人語を読もう▶「有権者は、小選挙区という洗浄機の使い勝手、破壊力を知った。約束した『日本の大掃除』の手を緩めたら、自民の二の舞いだろう」。中道ならぬ堂々の中庸の筆。民主党政権の顛末を思えば、天の声とも思える▶そう言えば「現在過去未来」で始まる昭和の名曲がある。「まるで喜劇じゃないの」などと切ない片思いを渡辺真知子が絶唱する。朝日も、現在でなく過去に学んで未来に備えてほしい。歌の題名が教訓になる。「迷い道」。

(落)

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source : 週刊文春 2026年3月5日号