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 春が来て嬉しかった年を思い出そうとするが、なかなか出てこない。桜は好きだ、暖かくなるのも嬉しい。でも記憶に残る春の景色は、胸の痛みと共によみがえってくる。

 満開の白い、本当にほのかにピンクに色づいている桜が、風に吹かれて花びらを飛ばす風景。それ自体はとても美しいのに、眺めている自分の心境はというと、緊張しているか、焦っているか、絶望しているかだったりする。

 サクラ咲いたら 一年生

 ひとりで行けるかな

 となりにすわる子 いい子かな

 ともだちになれるかな

『ドキドキドン!一年生』の歌詞にある状況を、小学1年生だけではなく、その後大学を卒業するまで私は毎年くり返した。

 歌詞からも分かるように、学生時代は春ごとに変わるクラスメイトと上手にやっていけるか、人間関係が心配で、桜どころじゃなかった。入学したてならドキドキするのもまだ分かるけど、クラス替えくらいで大げさな、と思われるかもしれないし、自分でもそう思っているはずなのに、集団内の人員構成が大幅に変わる節目には、卒倒しそうなほど緊張してしまう。

 学校を卒業して自由業に就き、春のクラス替え的なものとは無縁になった今でも、出版社の人が、人事異動や部署変えの話をしているのを聞くと、自分は関係ないのに胸がざわつく。

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source : 週刊文春 2026年3月5日号