「父と一泊二日の旅行に行っていただきたいんです」
なるほど、と無言で頷きつつ、手元のタブレットに目を落とす。依頼人は須合聡という三十三歳の男で、応募フォームの【依頼内容】の欄には「親孝行代行」とある。あらゆるニーズにオーダーメイドで応える業界最大手の代行会社に中途で入社し、今年で五年。家事や宿題、犬の散歩、やや変わり種だと墓参りなど、ここまで多くの案件をこなしてきたが、さすがにこれは初めての経験だった。職業柄“べき論”は唱えないようにしているものの、こと親孝行に関してはやはり実子がすべきだし、そもそもそれ以外の人間では成立しない性質のものに思えるのだが。
こちらの疑念を見越してか、須合は「会うのは三十年ぶりです」と言い添えた。「他所に女を作って家族を捨てた、ろくでもない父親です。顔はほぼ覚えていないですし、それは向こうも同じでしょう」とも。だからバレません、とでも言うつもりか。
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source : 週刊文春 2026年3月12日号






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