(おぎわらひろし/1956年、埼玉県生まれ。広告制作会社勤務を経てフリーのコピーライターに。97年、『オロロ畑でつかまえて』で小説すばる新人賞を受賞し小説家デビュー。2016年、『海の見える理髪店』で直木賞受賞。著書多数。最新刊『陰謀論百物語』(小社)が3月25日発売。)

 

 僕の生まれ育った実家は、埼玉県の大宮駅と与野駅の中間あたりにありました。今では「さいたま新都心」と呼ばれる地域ですが、家の前の道路を隔てた先にあるのは田んぼと薄暗い雑木林ばかり。当時はまだ驚くほどでっかいウシガエルがいたりして、夜になるとその鳴き声が聞こえるような田舎でしたね。

 父は東京の会社に通うサラリーマンで、家は2階建ての一軒家です。父と母、祖母、それから兄と弟という男ばかりの三兄弟の6人暮らし。貧しくはないけれど、余裕があるわけでもない、ごく標準的な家庭だったと思います。兄弟も男3人となると家の中はどうしても殺伐とするもので、よく喧嘩もしましたよ。

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source : 週刊文春 2026年3月19日号