京都で出会い、友となり、同じ夢を見た5人。しかし東京で待ち受けていたのは、芸能界の虚構と、自分たちの志す音楽が出来ない、葛藤の日々だった。

 

(しまざききょうこ 1954年、京都市生まれ。ノンフィクション・ライター。著書に『森瑤子の帽子』『安井かずみがいた時代』『この国で女であるということ』『だからここにいる』などがある。)

 1969年1月5日、朝日新聞の正月連載「現代の青春」に、ザ・タイガースが登場した。事故や広告以外でタイガースが同紙に載るのははじめてのことだった。タイトルは「金のたまご」、メインの見出しには「ぎっしりの日程表」とある。〈中井国二マネジャー(26)は、つくづく疲れたと思う〉で始まる記事には、不機嫌そうなメンバーの姿や独立の噂が記され、彼らが所属する渡辺プロダクションとの契約書も写してあった。

〈金網の中で飼いならされた鶏が、あたかも卵を生む機械のように、ひたすら卵を生み続ける、あの「ケージ式鶏飼育法」を思い出させる仕組みである〉〈彼らは、肉体的にというより、人生において、より多く疲れているのではないか〉

 同年3月、リードギターで「花の首飾り」を歌った加橋かつみが「失踪」したため渡辺プロが記者会見を開いて「除名」を発表、新メンバーとして岸部修三(現・一徳)の弟でアメリカにいた岸部シローが加入、新生タイガースとしてスタートした。71年1月24日、タイガース解散。ファンにとっては忘れられない胸痛む一連の出来事について、一般紙が触れることはなかった。

1971年1月24日に日本武道館で行われた、さよならコンサート“ザ・タイガース・ビューティフル・コンサート”

 朝日新聞が1面で芸能ニュースを取り上げたのは、2016年1月14日のSMAP解散危機が最初であった。同社はデジタル化を含めて若い読者を獲得していこうという時期で、激論の結果の1面掲載だったという。社会面トップにも「SMAP解散しちゃうの?」と見出しが躍り、ファン目線に近い好意的な内容である。6日後の総合面では、当時の安倍晋三首相のコメントまで載った。

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source : 週刊文春 2021年7月22日号