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私の生活の中心は、ビジネスを成功させるという「目的」を実現する「手段」を追い求めることにあります。とくにAIは手段をブーストさせる存在だと考えており、その構造や未来像について学習を続けています。そこで手に取ったのが『生成AIで最強の組織が生まれる トップと現場をつなぐ一次情報経営』(中野慧 KADOKAWA 2000円+税)。AIが現場の商談やリアルな顧客の声など大量の定性データを定量データに変換できることに着目し、組織の意思決定をガラリと変えていく可能性を論じています。

一昔前、「ビッグデータ」が“宝の山”ともてはやされましたが、私は違和感を持っていました。当時「データ」と言えば、多くは行や列で整理された構造化データを指していました。一方で世の中にあふれる音声や画像、動画といった一次情報のほとんどが構造化されていない定性データです。通販を始めた際、「顧客データが取れるからいいね」と周囲から言われましたが、加工されたデータを見ても分かった気になるだけで、逆にお客様のことが全然見えなくなった気がしていました。データ化するためには膨大な一次情報をそぎ落とし、加工する必要がある。つまり恣意的に翻訳された二次情報しか得られなくなり、本当の意味で重要な顧客データが残らないこともあったからです。
ところが、〈人類史上初めて「暗黙知」をそのまま扱えるIT〉である生成AIが登場したことで、状況は一変しました。AIは〈これまで捨てられていた膨大な「現場の生の声」を、計算可能なデータに〉変えることができるのです。この意味は相当大きい。
chocoZAPの1900を超える店舗にはすべてAIカメラが付いており、一次情報の宝庫です。例えば今後、会員の方に店舗の清掃を手伝っていただく「フレンドリー会員」という仕組みの中で、会員さんが退館したら、カメラで埃の量を観察してスコアリングするといったことも可能にする計画を進めています。「きれい」とか「ちょっと汚い」といった主観的な判断ではなく、AIが介在することで客観的で統一された物差しが生まれるのです。スコアが一定以下ならアラートを出すといった仕組みも作れますし、利用者数の多い店舗をスクリーニングして、様々な勝ちパターンを抽出していくといったこともできるようになります。もちろん、データを取捨選択するための問いや仮説の設定はきちんとやる必要がありますが、AIは定性データを、人間による恣意性を減らしながら、計測可能なデータに変換してくれる「超優秀な翻訳者」だと言ってもいいかもしれません。
AIの出現は、例えるなら、戦国時代、戦う武器が刀から鉄砲に変わったほどの衝撃があります。人生を剣術に捧げてきた人でも、手段は常に変化させていかざるを得ません。現在のAIについては「まだまだ使えない」という声もありますが、本書でも〈印刷機を嘲笑した写本職人はどうなったか〉とあるように、新しい技術は最初は精度が甘かったとしても、いずれ進化していきます。であれば、割り切って頭をシフトし、自分のキャリアや目指すものを考え直した方がいい。刀に固執して、「まだ大丈夫」と自身に言い聞かせるのは、決して自分を守る行為ではありません。多くの人は自分が積み上げてきたものに執着してしまうものですし、過渡期のタイムラグもある。その時間差を利用して一つ先のものを見ていく人が強いのだと思います。
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source : 週刊文春 2026年6月11日号






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