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小説をあまり読まない私でも、いつの間にか没入して読んでしまったのが、直木賞候補にもなった『青天』(若林正恭 文藝春秋 1800円+税)です。どこにでもいる高校生「アリ」がアメリカンフットボールを通して自分自身を見つめ直し、少しずつ成長していく姿が、等身大の落ち着いた筆致で描かれています。
挫折、友情、自己否定と自己肯定の揺らぎ、自分の存在に関する疑問など、誰もが青春期に直面する課題が、この作品には詰まっています。主人公が仲間との葛藤や教師との交流、何よりも内省とアメフトにおける心身のぶつかり合いを通してそれに向き合い、昇華していく姿には思わず感情移入してしまいました。

作中、主人公は何か偉業を成し遂げるわけではありません。自分なりの努力を重ね、戦略を練り、ベストを尽くして臨んでも、相手のタックルで仰向けに倒される「アオテン」を食らい、当たり前のように負けてしまいます。現実でも、努力が必ず報われるなんてことはありません。それでも、傍から見れば同じ行動や結果であったとしても、自分がどうそれを意味づけていくのかによって世界の見え方は大きく変わってくる。負けることがわかっていながら自分の存在価値を確かめるかのように相手に向かっていくアリの姿からそんなメッセージを受け取りました。
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source : 週刊文春 2026年7月23日号






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