【前回までのあらすじ】大宝テレビのディレクター・加藤大地が大御所芸人のウォッチャー目黒にレイプされた。同局のニュースキャスター・鷲尾粧子(50)と加藤の親友の「週刊文春」記者・速水理央(34)は、各々この件の報道を企てる。理央は第一弾の記事を書き上げるが、編集長から一旦ストップの命令が下され、別の案件の自転車問題について地元で取材を始めた。
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「ちょうど、あなたが通ってた頃じゃないかな。女子高校生が二人揃って、マンションから飛び降りる事件があったでしょ。憶えてる?」
背後から頭を殴られたようなショックに、理央は口がきけなかった。
自転車の青切符について取材しに来ただけ、だったはずだ。狭い交番の奥の間、防犯や交通安全や警察官募集のポスターが貼られた壁が、四方から迫ってくるようで息が苦しい。尻の下の椅子がひどく硬い。
尋常でない顔をしてしまったらしい。
「申し訳ない。こんな話、するべきじゃなかったね」
遠藤巡査がすまなそうに片手でこちらを拝む。
「……いえ」
どうにか普通の声を絞り出した。
「憶えてますよ、もちろん」
「いやいや、いいよ、思い出させて悪かった」
「いいえ。私にとっても忘れられない事件なので」
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source : 週刊文春 2026年6月18日号






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