(かじおしんじ/1947年、熊本県生まれ。71年「美亜へ贈る真珠」でデビュー。代表作に『地球はプレイン・ヨーグルト』『怨讐星域』(星雲賞受賞)、『未踏惑星キー・ラーゴ』(熊日文学賞受賞)、『サラマンダー殲滅』(日本SF大賞受賞)、「エマノン」や「クロノス・ジョウンター」シリーズなど。)

 

 今年の春、「エマノン」シリーズ9年ぶりの新作『もののけエマノン』(徳間書店)や、『おさご幻奇譚 仏原騒動異聞』(河出文庫)を刊行しました。それから、長年ずっとキノコ採りが趣味なものですから、『キノコがわたしを呼んでいる』(小学館新書)なんて本も。最近はサイン会で若いファンの方にも会えるので、長年書いてきてよかったなと思います。

 映画化もされた『黄泉(よみ)がえり』や、47年以上にわたって書き続けられている「エマノン」シリーズなどで多くのファンの支持を受け続ける小説家・梶尾真治さんは、1947年、熊本県熊本市で一男二女の長男として生まれた。

 生家は市内米屋町で雑貨店を営んでいた店舗兼住居です。典型的な昔ながらの商家の構えで、1階が店舗になっていて、店先から奥へ入ると土間と台所、そして家族の食堂や部屋がある居住空間でした。2階には住み込みの丁稚さんたちが寝泊まりしていて、狭いながらも賑やかだった記憶があります。

 母は専業主婦、父は後にガソリンスタンド・チェーンのカジオ貝印石油を経営する商売人です。仕事一辺倒ではなく、ゴルフはシングルの腕前で、写真や小唄など道楽が好きでした。中でも俳句には打ち込んでいて、ホトトギス派に属し、句集まで出しています。幼稚園の頃、私は自家中毒をよく起こしました。虚弱と言うほどではなかったものの、集団行動にストレスを感じる性質だったんでしょう。

 だけど、小学校に上がると、友だちも出来て活発に外で走り回るように。父が俳句仲間と吟行へ行く時などもついて行きましたが、私は俳句にはまったく興味が湧かない。虫を追いかけ、生き物を捕まえてばかりいました。ホトトギス派は高浜虚子を頂点として、写生を重視してたけど、子供の私には退屈だったんです。

SFに魅了された少年時代。同人誌「宇宙塵」に最年少で参加

 私と物語との出逢いは漫画と映画に尽きます。夢中になったのは、やはり手塚治虫です。『メトロポリス』『ロストワールド』も小学校に入る前から読んでました。まだサイエンス・フィクションという言葉も一般的ではなく、空想科学と呼ばれていた時代です。私はその頃から完全にそういう世界に取り憑かれていたんでしょう。当時、手に入る手塚漫画はすべて買って、いまだに保管しています。このコレクションだけは手放せないですね。

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source : 週刊文春 2026年6月25日号