(ながしまゆう/1972年、埼玉県生まれ。2001年『サイドカーに犬』で文學界新人賞を受賞しデビュー。02年『猛スピードで母は』で芥川賞、07年『夕子ちゃんの近道』で第1回大江健三郎賞、16年『三の隣は五号室』で谷崎潤一郎賞を受賞。最新刊『七、八月のストローク』を5月に上梓。)

 

 住んできた家については、小説の中で結構書いてきました。家のことに限らず、自分の人生で得た実感はそのまま用いるようにしています。私小説的になってもです。フグの料理人に「フグがうまいのであって、お前の手柄じゃない」と言う人はいないじゃないですか。毒を取り除いたりとか盛り付ける技術があるわけで、私小説もそれと同じだよねと思ってます。

 芥川賞・大江賞作家の長嶋有さんがデビュー25周年を迎えた。コラムや漫画評などの執筆を手掛ける「ブルボン小林」名義の活動も、ちょうど四半世紀を数える。

 長嶋さんは、1972年9月30日、埼玉県草加市に生まれた。

 父母ともに通っていた獨協大学のキャンパスが草加にあり、学生結婚だった流れで大学近くのアパートに住んでいたそうです。兄と、学年で言うと2つ違いの僕が生まれて手狭になったらしく、東京・吉祥寺にある父の実家へ4人で引っ越したのが、僕が生後間もなくの頃。ただ、3歳の時に両親が離婚して、母と僕たちは、母の実家がある北海道に移り住みました。

 上野発の夜行列車に乗って、青函連絡船で青森から函館に渡り、海沿いを電車でぐるっと回るという長旅のすえに辿り着いたのが登別市の富岸(とんけし)です。三角屋根の家で僕らを出迎えてくれた祖父母が、「よく来たな!」と歓待してくれたことは今でもよく覚えていますね。でも、優しかったのは初日だけ。特に、祖父は厳しい人でした。

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source : 週刊文春 2026年7月9日号