(たなかけん/1951年、福岡県生まれ。72年、「あおい健」の芸名で歌手としてデビュー。その後、俳優に転身し、数々の映画やドラマ、舞台などで活躍。日本屈指のケーナ奏者としても知られる。今秋、全国5カ所で開催される「俺たちの旅 スペシャルコンサート」に出演予定。)

 

 ドラマ「俺たちの旅」の放送開始50年を記念して、今年、映画『五十年目の俺たちの旅』が公開されました。主演の中村雅俊君も、秋野太作さんも僕もみんなシニア世代ですからね。いい年したおじさんたちが青春ドラマをやって大丈夫なのか不安になったけど、今回監督も務めた中村君が「見た目は歳をとっても心は青春だから、青春ドラマなんだよ」と。それを聞いて「そうだ、心だけはいつまでも青春なんだな」って思えたんです。まあ、スクリーンに顔が大映しされるのは、ちょっとキツかったですけどね(笑)。

 俳優として数多くの映画やドラマで活躍し、ケーナ奏者としても知られる田中健さんは、1951年、福岡県筑後市に生まれた。生家は田園風景が広がるのどかな場所にある平屋の一軒家。米や八女茶を作る農家で、両親、祖父母、11歳上の兄、年子の姉と妹の8人暮らしだった。

 田舎だからね、家の敷地はやたら広くて1反(約300坪)くらいあったんじゃないかな。母屋はいくつも部屋があり、鏡台を置いた化粧部屋、自家製の味噌や醤油を寝かせる味噌部屋も。土間の横の牛舎には農耕用の牛が1頭つながれていました。

 牛のエサにするための草を刈り、庭の井戸から水を汲んでくるのは僕ら子供の仕事。ガスが通っていなかったので、学校から帰ったら風呂や炊事に使う薪を割るのも日課でした。農作業の手伝いも当たり前で、茶摘みの時期には摘んだ茶葉を運び、稲が実る季節には早朝に田んぼに行き、鳴子を引いてスズメを追い払う。もちろん田植えや刈り入れも手伝いました。農家には休日がありません。自由に遊べるサラリーマンの家の子が羨ましかったなぁ。

 親族がお茶の焙煎をしていた関係で、我が家は近所の農家のお茶の取りまとめをしていました。持ち込まれた茶葉を蒸した後、座敷にドバッと広げて乾燥させるんですよ。茶葉が熱くて部屋は蒸し風呂のような暑さ。早く冷ますために、それを夜中までかき混ぜるんです。

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 庭にはミツバチの巣箱を置いていて、はちみつも自家製。飼っていたヤギの乳を搾って飲み、朝は鶏小屋から生みたての卵をとってきて、お祭りの時には鶏を1羽しめて食べる。まさに自給自足でしたが、現金収入が少ないから、生活はラクじゃなかった。一家で汗水垂らして働いているのにどうして貧乏なんだろうといつも思っていました。

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source : 週刊文春 2026年7月16日号