「そこそこ」、それが一番似合う言葉。埃を被った記憶の箱の奥にある、語るほどのことのない学生時代。ごくごく平凡な、ほんの少しだけ微熱に浮かされたような思い出。

 子供の頃から足はそこそこ早かった。走り幅跳びなんかもそこそこ跳べた。だが、球や道具を使った競技はあまり得意ではなかった。そのくせ中学の時に入ったのは軟式テニス部。理由は簡単、小学校の頃に親が入っていたテニスクラブに半ば無理やり入れられ、形だけでもテニスが出来たから。中学に硬式のテニス部はなく、だから軟式。要は何となく。ぼぉっと生きていたのだ。

 軟式テニス部はかなりハードだった。朝練もあり、放課後は日が沈むまで。長期の休みも、春は満開の桜の下、夏は蝉の声に包まれ、冬は冷たい風に吹かれながら毎日練習した。

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source : 週刊文春 2026年7月9日号