【前回までのあらすじ】芸人のウォッチャー目黒にレイプされた、とディレクター・加藤大地から聞かされた大宝テレビのニュースキャスター・鷲尾粧子(50)と加藤の親友の「週刊文春」記者・速水理央(34)。記事にすべく奔走する理央は、途中、高校時代の親友たちの自殺に目黒が関わっていたことを知り、親友の母を取材。「愛娘を喪った母の告発の記」を誌面に放った。

 

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 加藤大地が、淡々とくり返す。

「俺があいつにクスリ盛られて犯されたのも、全部初めから決まってたのかな」

「そ……」理央は必死にかぶりをふった。「そんなこと言ってない!」

「速水が、超特大のスクープをモノにしてエース記者になるためにさ」

「だから、そんなつもりで言ってるんじゃないってば!」

「声が大きいよ」

「ご……ごめん。今のは、私が悪い。こっちの都合で言ったんじゃないけど、そう聞こえるよね。つい焦っちゃって」

「いいよ」

 加藤がうつむき、小さく笑った。

「冗談だよ。速水がそんなつもりで言うわけないし。週刊誌の仕事が大事なのもわかってるつもりだし」

 腋の下に冷汗が噴きだす。

 迂闊だった。古い友人への甘えと油断がどこかにあって、早く次の記事を出したいという願望が先走ってしまった。

 冗談だとは言ってくれたが、彼がこちらの物言いに引っかかりを覚えたのは事実だ。ただその感情が、〈深く傷ついた〉から〈カチンときた〉までのグラデーションのうち、どのへんに相当するかがわからない。それが怖い。

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source : 週刊文春 2026年7月9日号