(たかのむつお/1947年宮城県生まれ。教員として働く傍ら作句を続け、94年宮城県芸術選奨、現代俳句協会賞を受賞。2002年俳句結社「小熊座」主宰継承。句集『萬の翅』で読売文学賞、蛇笏賞ほか受賞。24年より現代俳句協会会長。著書に『語り継ぐいのちの俳句』など。)

住まいは宮城県多賀城市です。もうかれこれ40年以上になる“終の住処”ですね。でも、当初は隣の仙台市に住みたいと思っていたんですよ。教員としての職場は仙台市内だったし、どこへ出て行くにも便利だから。だけど妻と物件探しに訪れた時、出来たばかりのマンションの近くを流れる砂押川の土手を歩いていたら、一羽のカッコウが鳴きながら私たちの頭上を飛んでいったんです。もちろん鳴き声は何度も聞いたことがありましたが、姿を見たのはそれが初めてで……。「ああ、ここに住んだら、こんなに自然が身近な暮らしが送れるんだ。よし、ここに決めよう!」となったわけです。それから、この家にも町にも、愛着を持って暮らしております。
東北出身・在住の俳人として知られる高野ムツオさん。同じ宮城の塩竈出身の佐藤鬼房が創刊した「小熊座」の現主宰であり、現代俳句協会会長。『NHK俳句』などでもおなじみの存在だ。また、15年前の東日本大震災を受けて“震災俳句”を多く詠んだことでも注目された。
2011年3月11日、私は東京の仕事からの帰りで仙台にいました。教師時代の教え子たちと久しぶりに会って遅い昼食をともにしていた時に大きな揺れに襲われました。もちろん電車は使えない。多賀城市の自宅まで約13キロ、5時間かけて歩いて帰りました。津波は砂押川の手前で止まったので、川が溢れることもなく、家族も全員無事でした。でも部屋の中は本が散乱してひどい有り様。窓から見える仙台港の石油コンビナートが炎上して、空は一面真っ赤でした。
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source : 週刊文春 2026年7月30日号






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