「この打球は生きている」落合が打ち続ける平凡なゴロが、荒木を追いつめていた。
(すずきただひら 1977年千葉県生まれ。日刊スポーツ新聞社に入社後、中日、阪神を中心にプロ野球担当記者を16年経験。2019年よりフリー。著書に『清原和博への告白 甲子園13本塁打の真実』、取材・構成担当書に『清原和博 告白』、『薬物依存症』がある。)
中日グループ総帥、白井文吾の邸宅は背丈ほどある塀に囲まれていた。私はアクセルを緩めながら門前を通り過ぎると、ワンブロック先の空き地沿いに車を停めた。
近隣の住民のものだろうか、少し先に乗用車が1台停まっていた。その車はどこか、周囲の景色に溶け込んでいないように見えた。
2011年9月初めの静かな朝、私は球団のオーナーである白井に、落合の去就を問うため、郊外の住宅街まで来ていた。
バックミラーに自分を映し、ネクタイを直して車を降りた。白井邸の前に立つと、外塀はより高く聳(そび)えているように感じられた。どことなく他者に感情を覗かせないこの家の主の佇まいを想起させた。
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source : 週刊文春 2021年2月4日号