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テスラやスペースXなどを率いるイーロン・マスクは私が常々注目している起業家の一人です。世界一の大富豪にのぼりつめながら、あくなき情熱で事業に邁進するエネルギーと、社会を変えたいという執念はやはり普通ではありません。自分の息子にも「どうせなら異常なぐらいぶっ飛んだことをやってほしい」という思いでマスクの評伝を読ませているぐらいです。
とはいえ、「マスク的なもの」には賛否両論があるのも事実。『マスキズム 新たな独占の時代』(クィン・スロボディアン、ベン・ターノフ 樋口武志訳 飛鳥新社 2000円+税)は、マスクが技術を武器に社会、経済、政治など様々なレイヤーで多大な影響力を持つに至った現状に警鐘を鳴らしています。

歴史家とテックライターである著者たちは、20世紀における「フォーディズム(フォードによる大量生産体制と大量消費社会)」になぞらえて、〈マスクはひとりの人間というより、「マスキズム(マスク主義)」という世界観を象徴するアバターだ〉と指摘します。重要な論点のひとつが、国家とのかかわりです。ウクライナとロシアの戦争でスターリンクが果たした役割や、アメリカの軌道打ち上げの95%をスペースXが占めていることなどが象徴的ですが、マスクが作る様々な事業は一企業の商品やサービスという範囲を超えて、国家すら依存せざるを得ないインフラになりつつあります。
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source : 週刊文春 2026年9月17日号
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