専門書、エロから、漫画や奇書まで。小誌連載「私の読書日記」で取り上げた1200冊の中にはヘンな本もあった。
『ぼくはこんな本を読んできた』『ぼくが読んだ面白い本・ダメな本 そしてぼくの大量読書術・驚異の速読術』『ぼくの血となり肉となった五〇〇冊 そして血にも肉にもならなかった一〇〇冊』『読書脳』(以上、小社刊)、また「週刊文春」2013年4月18日号~20年2月27日号より引用しました。
「私の読書日記」立花隆の担当回は1992年8月27日号から始まった。以後、2020年2月27日号まで320回。連載は27年半にわたった。政治、歴史、宗教から金融工学、最新医療の世界まで、あらゆるテーマの書物を、その時々の興味の赴くままに取り上げた。
だから、〈私がどういう本をとりあげてきたのか自分で分析してみようと思って、一冊一冊どういうカテゴリーの本か細かく分類して、カテゴリー名を書いていったら、やがて、カテゴリー名で紙がいっぱいになって収拾がつかなくなってしまった〉という。
ただ、自分なりに嗜好を一言で総括すると〈私は結構変なものが好きなのだ〉。それは〈ビザールとしかいいようがない変なもの〉と〈エロス〉への偏愛だった。
例えばアニエス・ジアール『図説“特殊性欲”大百科』を、こう評した。
〈ページをめくるごとに、「ギョエーッ」、「オエッ」、「ウヒャッ」、「エッ、ウソ」などの奇声を次々に発せざるをえないような変態SEX、変態性欲世界のオンパレード。帯に「驚愕の294態の“ビザール”な快楽」とある。フランス語で「奇妙な、怪奇な、風変りな」の意味の日常語である。日本語で「あの人ヘンタイよ」というときのヘンタイに近い語感。写真満載だから一目でそのヘンタイぶり奇天烈ぶりがわかる〉
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source : 週刊文春 2021年8月12日・19日号