8月12・19日夏の特大号で「小誌記者『選手村バイト』でわかった安全・安心のウソ」と題する記事を発表した「週刊文春」の甚野博則記者(48)。だがこの記事の内容は、膨大な取材データのほんの一部に過ぎない。電子版オリジナル記事として、甚野記者が誌面には書けなかった“選手村の真実”を詳細にレポートする。(全4回)

◆甚野博則(じんの・ひろのり) 1973年生まれ。大学卒業後、大手電機メーカーなどを経て2006年から「週刊文春」記者。2017年に「『甘利明大臣事務所に賄賂1200万円を渡した』実名告発」で、19年に「証拠文書入手! 片山さつき大臣 国税口利きで100万円」で「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」スクープ賞を2度受賞。

※前回の記事を読む

喫煙所にできた列が「密」

◆7月4日(日)

 朝から雨だった。この日も研修のため10時に選手村の入り口前に集合した。OJT研修(PSA編)というのが行われる予定だった。

 前日に警察による危険物検査が行われ、この日からPSA(選手村のスタッフ入口)が稼働していた。スタッフがPSAを通過するためには、まずアクレディテーションカードを機械にかざす必要がある。そのため、本日の作業は、今日研修に訪れる一部のスタッフたちにアクレディテーションカードを外で配付するというものだった。研修というより仕事である。

 選手村の入口付近では「栃木県警」と書かれた制服に身を包んだ警察官数名が警備に当たっていた。

 この日はまず、メインダイニング(MD)から台車に乗せた大きなプラスチックボックスを数十個運び出す作業を手伝った。その後、タクシーにプラスチックボックスを詰め、アルバイトがタクシー4台に分乗して築地にあるビジネスホテルに移動。ホテル2階の会議室にボックスを運び、明日に配布するアクレディテーションカードの仕分け&チェックを行った。氏名、社員番号、電話番号などが書かれたリストを渡され、このリストに名前が載っている人のカードをあいうえお順にボックスへ入れていく。同ホテルには、私が勤務する会社のスタッフが宿泊しているという。彼らは深夜早朝勤務もあるというから大変だ。

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source : 週刊文春