アフガニスタンで反政府武装勢力タリバンが政権を掌握しました。ひげもじゃの男たちが小銃を持って集まっている映像がニュースになりました。そもそも彼らはどんな存在なのでしょうか。基礎から解説しましょう。

 彼らはタリバンと呼ばれています。朝日新聞だけは発音に忠実ということでしょうか、「タリバーン」と独自の表記を続けてきましたが、今回遂に「タリバン」に統一しました。これを日本語に訳すと「学生たち」です。なぜここで学生たちが出て来るのか。事の始まりは1979年にさかのぼります。

 アフガニスタンは、北は旧ソ連のタジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンと境を接します。西はイラン、東はパキスタンと国境を接する内陸国。山岳地帯の国で、夏は暑く、冬は寒いという苛酷な環境です。

 周囲を多くの国に囲まれているので、多民族国家です。最大民族はパシュトゥン人で、ほかにもタジク人やウズベク人、ハザラ人などが住んでいます。多くはイスラム教スンニ派ですが、ハザラ人はシーア派です。ここには、かつてモンゴルが攻め込んできたことがあり、ハザラ人はモンゴル系です。日本人そっくりの顔をしている人が多いんです。

 もともと平和なイスラム教の国で、国王がいる立憲君主制でしたが、1973年、国王が病気治療のために国外へ出た隙に従兄弟がクーデターを実行します。王制を廃止して共和国にし、ソ連に接近して社会主義体制への移行を目指します。

 これに国内のイスラム教徒が反発。反政府活動が活発になります。これを見たソ連は、国内にイスラム過激派の影響が及ぶことを恐れ、1979年、軍をアフガニスタンに侵攻させます。

 イスラム教徒にとって、自分たちの住む場所を守ることは「ジハード」(聖戦)です。これをきっかけに若者たちが武器を取ってソ連軍と戦い始めます。彼らは「ムジャヒディン」(イスラム聖戦士)と呼ばれました。彼らを支援しようとサウジアラビアなど中東のイスラム圏から大勢の若者が応援に駆け付けます。当時サウジアラビアにいたオサマ・ビンラディンも、このときアフガニスタンにやってきたのです。この戦いにアメリカが目をつけます。

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source : 週刊文春 2021年9月2日号