「週刊文春」が8月26日発売号、9月22日発売号と2度にわたり報じてきた、フジテレビ系列・岡山放送(OHK)の男性社員の自殺問題を巡り、会社側の対応に社員から疑問の声が上がっていたことが「週刊文春」の取材でわかった。
岡山放送は9月29日、自殺の主な原因は長時間労働であり、上司によるパワーハラスメントも確認されたとの社内調査結果を発表。中静敬一郎社長を減俸20%(3カ月)、パワハラをした上司を停職2カ月とするなど複数の幹部社員を懲戒処分とした。
「週刊文春」は調査結果発表前の9月27日、岡山放送と子会社の全社員を対象に開かれた、社員・柏田貴一さん(30・仮名)の自殺に関する社員説明会の音声を入手した。
柏田さんは今年3月からお笑いトリオ「ハナコ」の冠番組「ハナコのBuzzリサーチ」を担当。現場で長時間労働を強いられ、総合演出を務める上司のX氏からパワハラを受けていた。
「『殺すぞ』などと暴言を吐かれ、物を投げつけられたこともあった。亡くなる直前には『お前は今まで関わってきた中で一番ダメなディレクターだ』と罵られ、ひどく落ち込んでいました」(現役社員)
そして柏田さんは7月6日、自ら命を絶った。
その約3カ月後の9月27日、岡山放送の新本社9階で柏田さんの自殺について説明する全社集会が開かれ、登壇した中静社長は「説明が遅れたことをお詫び致します」「ご遺族に誠心誠意、対応いたします」と語った上で、柏田さんの死について涙ながらにこう言った。
「人のやりくりができず、(柏田さんに)手を差し伸べられなかったのです。こんなバカな話もありません! なんとしても実行しなければいけないことの一つは、OHKグループの働き方の抜本改革です」
社長が会を締めようとした時、一人のベテラン女性社員が「待ってください。発言させてください」と声を上げ、涙ながらにこう訴えた。
社員の抗議「今回のことで会社の対応は余りにも遅すぎます」
「悪かったとき、そういう時こそ『報告はすぐに、対応は素早く』とそう言われて今まで育ってきました。今回のことで会社の対応は余りにも遅すぎます」
「社長のメッセージを最初に頂いた時、落胆しました。どう考えても『わからない』と、この段階で言われることはなかったと思います」
会の出席者が説明する。
「社長は8月、柏田さんの亡くなった原因について『よくわからないとしかいいようがない』と社員にメッセージを発信したのです。柏田さんが長時間労働やパワハラに悩んでいたことは周囲の誰から見ても明らかだったのに、ろくに調査をする姿勢が見られず、社員は呆れ果てました」
女性社員の訴えに、中静社長は「皆さんに対し、傷つけたことを深くお詫び申し上げます」と応じた。
柏田さんの母は小誌にこう語った。
「会社の方から『何かお知りになりたいことがあれば仰ってください』と言っていただいたので、息子の亡くなった経緯について、より詳しくお尋ねしたところです」
岡山放送は社員や遺族の声にどう応えるのか、注目される。
10月6日(水)16時配信の「週刊文春 電子版」および10月7日(木)発売の「週刊文春」では、岡山放送の調査報告書の内容やスポンサーの抗議、組織改革によって現場が疲弊した様子などについて報じる。
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source : 週刊文春 2021年10月14日号