なぜケニアで電子マネーが普及したのか|三木谷浩史

三木谷浩史「未来」 第17回 

三木谷 浩史
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(みきたにひろし 1965年神戸市生まれ。88年に一橋大学卒業後、日本興業銀行(現・みずほ銀行)に入行。退職後、97年にエム・ディー・エム(現・楽天グループ)を設立し、楽天市場を開設。現在はEコマースと金融を柱に、通信や医療など幅広く事業を展開している。)

 今から5年ほど前、家族でアフリカのケニアを旅行する機会があった。僕にとっては久々のオフだったのだけれど、現地である一つの光景を目の当たりにした時、休暇だったことを忘れて起業家としての関心が刺激された。

 それは、ケニアの少し観光地化されている田舎を訪れた際のこと。そこは土で作られた家が並ぶような小さな村だったが、人々が当然のようにスマートフォンを使っていた様子にまずは目を惹かれた。そして続けて驚いたのは、ちょっとした土産物を買おうとした時、僕が現金でお金を払おうとすると、「M-PESAでもいいよ」と店の人から言われたことだった。

 M-PESAとは、ケニアの通信会社サファリコムなどが提供するモバイル決済サービスだ。携帯端末さえ持っていれば、銀行口座を作る必要はない。SMS(ショートメッセージサービス)によるやり取りだけで送金や預金の引き出し、支払いがどこにいてもできる。給料や公共料金の支払いにも使われており、現在ではケニアにおける重要な金融インフラとなっている。

 アフリカでモバイル決済のサービスが盛んなことは、かねてから僕も聞いていた。でも、5年前に見た、実際に現地の小さな村の人々がそれを活用している光景には、やはり衝撃を受けるものがあったのだ。

 その頃の日本のキャッシュレス決済と言えば、EdyやSuicaといったカードが真っ先にイメージされるものだった。

 一方、ケニアではSMS上で「いま、あなたの電話番号に50M-PESAを送ったよ!」といった気軽さで、電子マネーによる取引が一般化している――。僕が強く惹きつけられたのは、その光景には通貨というものを巡る様々なテーマが込められているように感じたからだ。

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source : 週刊文春 2021年10月28日号

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