新年早々値上げラッシュです。去年の秋にはガソリン価格が上がりましたし、暮れにかけて牛丼チェーンが相次いで値上げを発表しました。最近は「ステルス値上げ」も増えています。「ステルス」とは「見えない」という意味ですね。たとえば16個入りのお菓子のパックを値段据え置きのまま12個入りにしてしまうようなことを言います。買い物客に気づかれないように値上げしているというわけです。
ガソリンも牛丼もお菓子も、ある共通点があります。それは、輸入品だということです。ガソリンは原油を精製したもの。原油は、ほとんどすべて輸入です。牛肉もアメリカやオーストラリア産ですね。お菓子の材料の小麦も大半は輸入です。
このように輸入品の値上がりが続いている理由は、円安が続いているからです。そこで今週は、なぜ円安が進んでいるのかを取り上げましょう。原因は、アメリカ経済が復活し、好景気になっているからです。
アメリカも去年はコロナの感染拡大で経済が大きな打撃を受けましたが、去年の夏以降は景気が回復しています。ワクチン接種が進んで新規感染者が減り、経済活動が再開されたからです。
その後、再び感染が拡大していますが、経済活動は縮小していません。コロナを軽視するようになったからか、コロナとの付き合い方に慣れたからなのか。バイデン政権による景気対策もあり、景気が回復。その結果起きたのが、物価の上昇。いわゆるインフレです。去年11月の消費者物価指数は、前の年の11月に比べて6.8%も上昇しました。これだけ上昇したのは第二次石油ショックで石油価格が急上昇して物価の値上がりが深刻な問題になった1982年以来、39年ぶりのことです。
こうなると、インフレ退治が必要になってきます。そこで動いたのがFRB(連邦準備制度理事会)です。アメリカではアルファベット3文字に短縮して表現するものが多いですね。この名称は私たちにはピンと来ませんが、要は中央銀行のこと。日本なら日本銀行が該当します。
だったらアメリカはなぜ「アメリカ銀行」と言わないのか。これは、アメリカが連邦国家だからです。中央集権的な中央銀行の設立に反対する政治家が多く、結局12もの「準備銀行」が設立されました。「準備銀行」とは、民間の銀行の経営が行き詰まったときに札束を持って駆け付ける役割の銀行です。ボストンやニューヨーク、シカゴ、サンフランシスコなどにあって、それぞれ管轄を持っています。この12の準備銀行が、それぞれの地域で中央銀行の役割を果たしているのです。
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source : 週刊文春 2022年1月13日号