(やまむらみち 女優・フリーアナウンサー。1956年、三重県生まれ。80年フジテレビにアナウンサーとして入社、『オレたちひょうきん族』などに出演した。85年に退社後、女優として活動し、『功名が辻』『恋する母たち』など出演作多数。昨年10月、夫との日々を綴った『7秒間のハグ』(幻冬舎)を上梓。)

 

 家族は、たとえ私が世界中を敵にまわしたとしても守ってくれる最後の味方です。家は、家族と安らぎともに生きた場所、私には最後の砦です。

 私は、一つ屋根の下に3人以上で暮らしたことがありません。その数少ない味方だった夫を一昨年、亡くしました。食道ガンでした。最初の摘出手術から入退院を13回も繰り返し、闘病は1年半に及びました。残ったのは一緒に暮らした部屋。夫が愛用したものはそのままで、彼の面影がそこかしこにあります。いつまでも引きずってはいけないと思っても難しいものですね。

「楽しくなければテレビじゃない」と、お笑い路線で80年代、業界を席捲していたフジテレビ。それを象徴する番組が『オレたちひょうきん族』で、局アナながら“ひょうきんアナウンサー”というキャラクターで一躍人気となったのが山村美智さん。アイドルアナウンサーの草分け的存在だ。
 山村さんは、1956年、三重県伊勢市に、建設会社を営む父と、専業主婦の母の間に生まれた。

 3歳の時に父を亡くし、会社は倒産しました。母と二人、小さな一軒家に引っ越しての生活が始まりました。キッチンを除く1階を人に貸し、2階の一間で幼少期を過ごしました。思い出すのは、仕事帰りの母の自転車の後ろに乗って行った銭湯。冬、冷え切った体で入るお湯が、火傷をするのではと思うほど熱くてね。

 母は満州の裕福な家庭で育ち、女学校も出たお嬢さんでした。当時、シングルマザーが働くのは厳しかったと思いますが、保険の外交員として猛烈に働いていました。母子家庭だからと後ろ指差されないように、運動会などの行事には欠かさず参加し、PTAの役員も務めていました。とにかく強い人だった。「なぜ叩かれたまま帰ってくるの!」とよく叱られました。私は気弱ないじめられっ子で、さぞ歯痒かったでしょうね。体も弱かったんです。幼稚園は休みがちで、ある日登園したら学芸会で発表する『白雪姫』のキャスティングがとうに済んでしまい、もう役がなかった。慌てた先生は、急遽、白雪姫を案内するうさぎの役を作ってくれました。

「ピョンピョンピョン、白雪姫さん、こちらです」

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source : 週刊文春 2022年2月3日号