ウクライナめぐる情報戦|池上彰

池上彰のそこからですか!? 第514回

池上 彰
ニュース 社会 政治 国際

「ロシアは2月16日にもウクライナに軍事侵攻する」

 こんな情報がアメリカのメディアで伝えられました。日本の外務省は、ウクライナにいる日本人に国外退去を呼びかけ、駐ウクライナ日本大使館の職員も一部を残して退去しました。こうした呼びかけは、日本のみならず韓国やイギリスなど各国でも行われています。これが一斉に発せられたのを見ても、アメリカからの情報提供があったことをうかがわせます。アメリカからは、「事態は切迫している」というメッセージがあったのでしょう。

 こんな緊迫した情報を日本のメディアも盛んに流していましたが、私には違和感がありました。なぜ16日なのか、根拠が不明確だったからです。

 ロシア軍がウクライナ国境に大軍を配備していることは確かですし、ウクライナと国境を接するベラルーシではロシア軍がベラルーシ軍と合同演習を実施していますから、そのまま国境を越えてウクライナに侵攻する可能性はあります。「軍事演習」の名のもとに軍を集結させ、実際には侵略したという例で言えば、過去には1990年の湾岸危機があります。このときイラク軍は、「軍事演習」の名目でクウェート国境に大軍を集結させ、クウェートに攻め込み、占領しました。さらに当時のイラクのフセイン大統領は、「クウェートの人々が併合を望んでいる」と言ってクウェートを併合しました。

 これに対し、アメリカのジョージ・H・W・ブッシュ(パパ・ブッシュ)大統領は、多国籍軍を組織し、翌年イラクを攻撃。イラク軍をクウェートから追い出しました。これが「湾岸戦争」です。

 この例に見られるように、侵略を意図する国家は、「軍事演習」を名目にすることがあるのです。

 しかし、改めて問いますが、なぜ16日だったのでしょうか。16日も17日も攻撃はありませんでした。これは、どう見たらいいのか。

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source : 週刊文春 2022年3月3日号

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