芥川賞的な子役!?「10歳の俊英」は伊達じゃない

テレビ健康診断

青木 るえか
エンタメ テレビ・ラジオ

『家出娘』。第45回創作テレビドラマ大賞、大賞作品の映像化である。応募作1047本中の第1位。シナリオの公募に出そうという人は「オレがドラマを変える!」という気合い満々で応募するだろうから、今までに見たことのないようなドラマが見られるのだろうか、と思って見てみた。

 内容はこう。母が死んで父と二人暮らしの娘・はるかが身一つで家出をし、東京にいる叔母(母の妹)を訪ねる。はるか、小学生なのにリュック一つで関西から東京まで一人旅。叔母さんはどうも売れない女優みたいでB級映画でゾンビ役とかやってるようだ。叔母さんのアパートで留守番したり二人で買い物に出たりしてぐだぐだ暮らしながらも、なんとなく二人とも心が通じ合ってる感じ。

 そして、どうも、はるかのお母さんは自殺したらしい。そのことについてはなんの説明もない。はるかもはっきり聞かされていない。母の葬式で、叔母さんは怒っていた。はるかもぶつけようのない気持ちを持てあましていて、その怒っている叔母さんだけが「自分の気持ちをわかってくれる」と思って、叔母さんの家に行き、そして二人は……。

 というような話で、この叔母さん役のファーストサマーウイカとはるか役の木村湖音(こと)、とくに木村湖音がすごい上手。NHK+のサイトに「10歳の俊英」とか書かれていて、なんだそりゃと思ったが見て納得。上手な子役にもいろいろあるが、毎田暖乃とか芦田愛菜がわかりやすい直木賞的な子役だとすると、木村湖音は芥川賞ですよ。文学的。母親に置いていかれた子どもの、なんとなくうまく表現できない不機嫌さみたいなものが、ほんとうまい。

現在は11歳の木村湖音(写真は3/22放送より)

 ファーストサマーウイカもすごくて、私には「はるかの叔母さん」にしか見えなかった。すごい役者だな、と思いつつ、「この役しかできないんじゃないか」と不安になるぐらいの、叔母さんの自然さ。

 すごいなあ、と思いつつ見終わった時にふと思った。これ、いいのは役者および映像ではないのか。映像もSTU48のMVみたいな、透明な自然の空気感みたいなのにあふれてて、演出も細かくて、叔母さんが蚊に刺されたとこを爪でバッテンにしてるとか、あとアパートの部屋の乱雑さとか、すごく細かく作り込んである。けど不思議と生活感がなくて、それもまたいい感じなんだけど。まさにNHKの能力と良心がつぎ込まれてる。しかし、こういうドラマってNHKではよく見る。別に新しくはない。創作テレビドラマ大賞っていうのは、NHKが撮りたいようなドラマが優勝するってことなのかなあ。それとも、民放でドラマ化したらもっと別な雰囲気になったんだろうか。そっちもちょっと見てみたいと思ってしまった。

『家出娘』
NHK総合 放送終了
https://www.nhk.jp/p/ts/9VL8J6ZM4L/

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source : 週刊文春 2022年4月14日号

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