本エッセーも今回で第50回。節目を迎えると特別な気分になるものだ。
公式戦対局も、新人の時代があれば円熟期もあり、いつかは終焉に向かう。実は私、「引退」という言葉が怖くて嫌いだが、今回はそれがテーマである。
特に年度末、他の業種の同世代と話すとこんな会話がちょくちょく出てきた。
「仕事早く辞めて趣味だけの生活送りたいなあ」
「退職後の資金がないから50代のアーリーリタイアなんて夢のまた夢だわ」
そう、私も退職したら好きな将棋を1日中指すのが夢で……あれ?
棋士という職業は趣味が高じて仕事になったようなもの。だから私は「仕事を辞めたい」という感覚が今一つ分からない。むしろ無報酬でも続けたいほどだ。
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source : 週刊文春 2022年4月21日号