週刊文春 電子版

妖怪と×印|清水克行

室町ワンダーランド 第3回

清水 克行
エンタメ 芸能

 郵便物を封筒で出すとき、封筒の閉じ目に書く「×」の印、あれ、皆さんちゃんと書いてますか?

 ネットで情報を検索すると、マナー講師と称する方々の「あれは〆であって×とは違うんです」とか、「お祝いごとの郵便には×を書いてはいけません」といった説が、いろいろ書かれているが、いずれも根拠のないものである。民俗学者の常光徹(つねみつとおる)さんによれば、そもそも×印や十字は「外部から侵入する、あるいは接近してくるものを遮断する」効果、つまり魔除(まよ)けの意味をもつ印なのだという。

 たしかに、考えてみれば、あの×印程度が封印として「第三者に中身を読まれていないことの証明になる」とは到底思えない。むしろ、勝手に開封しようとする不届き者を斥ける“おまじない”としての効果があったと考えたほうが、しっくりくる。

 さて、そう考えてみると、日本の古くからの風習に×印や十字は意外によく見られる。たとえば、子供の頃、汚いものに触れそうになったときにやる、「エンガチョ」という指クロス。あれも、人差し指と中指を交差させて×印をつくることで、邪悪なものから身を守る効果が期待されていたようだ。

 あと、古いお寺や銭湯の大屋根などに見られる三角形の飾りを破風(はふ)というが、あそこにもよく格子(こうし)木で井桁(いげた)形の装飾が施されているものがある。古来、破風というのは、そこから鬼や魔物が家内に侵入すると考えられていて、殊更にデリケートな部分と考えられていた。そこで破風には、しばしば格子状の装飾で十字をたくさんつけたようだ。

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source : 週刊文春 2022年5月19日号

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