ウクライナに侵攻したロシア軍が、次はモルドバに侵攻するのではないかという懸念が広がっています。でも、モルドバという名前を聞いたことのない人も多いでしょうね。ここも旧ソ連の一部だったのです。その点ではウクライナと同じ立場ですし、モルドバの中にも親ロシア派勢力が自称「独立国」を宣言している地域があるのです。ここも似ています。どういうことなのでしょうか。

 ロシア軍がウクライナへの侵攻を始めてまもない3月1日、プーチン大統領の盟友といわれるベラルーシのルカシェンコ大統領は、政府の安全保障会議を開き、ウクライナ情勢について、地図を掲げて説明しました。この様子はベラルーシ国内でテレビ放送されたのですが、注目を集めたのは、ウクライナ南西部で国境を接しているモルドバに対し、ロシア軍が侵攻する予定であるかのような矢印が描かれていたことです。

 おそらくルカシェンコ大統領には、事前に侵攻計画が伝えられていたのでしょう。それをそのままテレビに映してしまう間抜けさには驚きますが、これではモルドバの人たちが警戒を強めるのは当然です。

 現在ロシア軍は、ウクライナ南部の黒海沿いの地域を攻撃し、すでにロシア軍が支配しているクリミア半島までを占領しようとしています。そこからさらに西に進んでモルドバまで達しますと、ウクライナを完全な内陸国にすることが可能です。港を失えば、ウクライナは小麦やトウモロコシなどの穀物を輸出しにくくなり、経済的に弱体化します。ロシアのプーチン大統領は、それを狙っているのでしょう。

 モルドバの人口はおよそ260万人。面積は九州とほぼ同じ。ルーマニアとウクライナの間に位置します。実はここは、もともとルーマニアの一部でした。ところが第二次世界大戦前、ドイツとソ連が秘密協定を結んでルーマニア分割を画策。ルーマニア東部のモルダビア地域をソ連が占領し、「モルダビア・ソビエト社会主義共和国」としてソ連の一部にしてしまいます。ソ連を構成する15の共和国のひとつにしたのです。

 帝政ロシア時代から不凍港を求めてきたソ連としては、少しでも黒海沿いの土地を欲しかったのですね。

 しかし、もともとルーマニアの一部だったこともあり、民族としてはルーマニア系で、言葉もルーマニア語です。国旗もルーマニアとよく似ています。

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source : 週刊文春 2022年5月26日号