ロシアのウクライナ侵攻を受けて、北欧のフィンランドとスウェーデンが「中立政策」を放棄してNATO(北大西洋条約機構)に加盟を申し込みました。ロシアの脅威から自国を守るには、集団安全保障体制の中に入ることが必要だと判断したのです。
フィンランドは、過去にこのコラムで取り上げたように第二次世界大戦時に当時のソ連軍の侵略を受けています。軍事力で劣るフィンランドは、多大な犠牲を出しながらも頑強に抵抗。なんとか独立を維持しましたが、領土の1割をソ連に割譲するという屈辱の結果になりました。
これ以降、フィンランドは「ソ連には脅威を与えません」という方針を取り、自国として軍隊は維持するけれど、NATOには加盟しないことで、ソ連、その後のロシアからの脅威を防いできました。
一方、スウェーデンも、「中立政策」を取ってきました。現在の地図を見ると、スウェーデンとロシアの間にはバルト三国があり、直接の脅威は少ないように思えてしまうかもしれませんが、かつてソ連時代、バルト三国もソ連の一部。内海を挟んで目と鼻の先にソ連があったのです。
さらにバルト三国がソ連から独立しても、リトアニアの南にカリーニングラードというロシアの飛び地が残りました。ここにはロシア海軍基地があります。ロシアはいつでもスウェーデンを攻撃できる位置にいるのです。
過去にはフィンランドもスウェーデンも、NATO加盟の是非をめぐって世論が分裂し、現状維持が続いてきました。しかし、ウクライナの苦境を見て、「ロシアを信用するわけにはいかない」という世論が盛り上がったのです。
両国の加盟が実現すれば、NATOへの新規加盟は2020年3月の北マケドニア以来。加盟国数は30から32に増えます。
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source : 週刊文春 2022年6月2日号