人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた。

 金玉工場の工場長、通称“おやっさん”の元に「自叙伝を書いてみませんか?」という話が舞い込んだ。近い将来引退を考えてたおやっさんはまんざらでもない様子で、ある日、工場にその編集者を招いた。

 張りを失くし、ダラーンと垂れ下った工場の外観(すなわち陰嚢)は廃墟に見えた。

 しかし恒例の朝礼では、

「いつ何時、大筒が持ち上がるか分らん。備えよ!」

 と、工員たちに檄を飛ばすのは変わらない。

 ちなみに“大筒”とは業界用語で、陰茎の意。

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source : 週刊文春 2022年6月16日号