中日の大野雄大投手(33)は左打者が苦手な左投手である。
「右には内角に真っすぐを突っ込んでいけるんです。外にもしっかり投げられるから、スライダーやカット、落ち球も生きてくる。ところが左の内には突っ込めてないんですね。だから(配球の)幅が広がらない」
中日スポーツの名物コラム「龍の背に乗って」を書く渋谷真記者の原稿で、大野本人がこう分析していたのを読んだことがある。
右打者には得意のクロスファイアーの真っ直ぐで内角をえぐれるので、変化球も有効に使って抑えられる。しかし左打者には、右打者ほど内角に投げきれない。それが左打者を苦手にする理由ということだ。
言葉だけではない。データも大野の左嫌いを証明する。今季の左右別の被打率は右打者の1割5分7厘に対して、左打者には2割8分1厘(数字はいずれも6月21日時点)。1割以上も多く左に打たれているのだ。
そこで周囲をおやっと思わせた場面があった。6月17日のバンテリンドームで行われた中日対巨人戦だ。この試合は巨人・菅野智之投手と大野の投げ合いで、両軍無得点のままに終盤の八回に突入。先にピンチを招いたのは大野の方だった。
二死から連打で一、二塁とされる。そこで巨人・原辰徳監督(63)は小林誠司捕手の代打に中田翔内野手を指名。中田が歩いた満塁で、今度は菅野に代えて石川慎吾外野手を打席に送った。左の大野に対して、いずれも定石通りの右の代打だった。しかし石川は2球で追い込まれると、最後は外角の真っ直ぐを空振りして3球3振。表の攻撃を無得点に終わると、その裏に中日に2点を奪われ、巨人は手痛い星を落とした。
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source : 週刊文春 2022年6月30日号