壮絶な打ち合いとなった6月24日からのヤクルト対巨人の三連戦。第三戦は三度もリードが入れ替わるシーソーゲームの末、最後に決着をつけたのはヤクルト・村上宗隆内野手(22)のバットだった。

早くも26本塁打を叩き出している(6月27日時点)

 8対8と同点の8回裏に放った決勝3ランは、センターバックスクリーンに飛び込む特大の一撃。確信歩きから人差し指を突き上げた村上の姿には、まだプロ入り5年目とは思えない風格すら漂っていた。

「確かに高校時代からスイングスピードの速さに注目は集まっていましたが、ここまで覚醒するとは……」

 こう語るのはスポーツ紙のベテラン遊軍記者だった。

「ドラフトでは早実の清宮幸太郎内野手を7球団が1位入札。ただ清宮を入札した巨人ですが、実は素質的には村上の方を高く評価していて、外れ1位で1本釣りできると踏んでいたのです。ところが予想に反して外れ1位でヤクルトと楽天も入札。目の前でヤクルトに村上をさらわれたときの、巨人関係者のがっかりした表情が忘れられません」

 悔し紛れか「巨人に入っていたらここまで伸びていたかは分からない」という巨人関係者の声を聞くこともある。しかしこと村上に関してだけは、そんなことはないと確信できる。それほどまでの凄い才能と、どんな環境でもその才能を伸ばせるだけの心の強さが、村上にはあるからだ。

 プロ入り直後、厳しく指導する当時の宮本慎也ヘッドコーチに「何で僕にだけそんなに厳しいんですか」と村上が食ってかかったことがあった。「お前を見込んでいるからだけど、普通にして欲しいか?」という言葉に、その後は黙々と練習についていったというが、何より高校を卒業したばかりの選手がコーチに食ってかかる度胸はそうはない。

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source : 週刊文春 2022年7月7日号