日本ハム・新庄剛志監督(50)の薬物問題を、6月10日発売の「文藝春秋7月号」で書いた。

 06年から日本野球機構(NPB)がスタートしたドーピング検査で、陽性反応が出ていたというもので、当時の球団代表だった小嶋武士氏が事実と認める証言をしている。使用した違反薬物はアンフェタミン系興奮剤の「グリーニー」と思われるが、驚いたのはこの報道を受けた日本のスポーツメディアのドーピングに対する意識の低さだった。

疑惑に無言を貫く新庄監督

 メディアの反応は大きく二つに分かれた。一つは報道自体に触れないもの。何せ人気者のビッグボスだ。ヘタに刺激して、今後の取材活動に影響を与えたくないということだろう。

 もう一つは「グリーニーが06年当時は禁止薬物ではなかったので問題ない」という報道だ。文春オンラインで速報が出た翌日の6月9日に、スポーツニッポンのネット版「スポニチアネックス」は、小嶋氏を取材、新庄監督がドーピング検査で陽性となった事実を報じた。しかし問題はスポーツ部野球担当部長の解説だった。

 ここでグリーニーは当時、日本の選手の間でも広まっており「選手がコーヒーに溶かして飲む姿もよく見かけた」とひとくさり。その上で06年当時「(グリーニーは)禁止薬物ではなく、対象になったのは07年から。大リーグから国内に復帰した新庄が06年当時使用していたと言われても、驚く話でもない」としたり顔で“解説”している。

メディアの誤認

 ただ、これは完全な誤報である。NPBでは06年のドーピング検査実施に向けて、2年前から禁止薬物は世界アンチドーピング機構(WADA)のリストに基づくことを告知していた。グリーニーは04年からWADAのリストに載っており、この時点で、明白な禁止薬物だったのだ。

 すぐに知り合いの記者を通じて解説が誤報であることは伝えたが、6月12日時点で記事の取り下げも訂正もされていない。

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source : 週刊文春 2022年6月23日号